実家の「寒さ」をなくしたいんだ|実家リノベストーリーVOL2

ある年の正月のことです。
築100年を超えるわが実家に 家族が集まりました。
祖父の代から使ってきた古い洋間です。
石油ストーブを二台たいても 足もとは冷えたままでした。
部屋の中なのに 息を吐くと白くなります。
祖母は厚手の靴下に 上着を着こんでいました。
姉妹たちはこたつから なかなか出ません。
子どもたちは 廊下に出るのをいやがりました。
「この家は 冬がほんとつらい」
75になる父の その一言が 実家リノベ工事の出発点になりました。
目次
わが家の冬は こんなでした
少し 昔のわが家の冬の話をさせてください。
冬の朝 室内の温度は 外とほとんど変わりません。
部屋の中なのに 息が白い。
これがわが家の あたりまえでした。
ストーブだけでは足りず 各部屋に暖房器具を置いていました。
灯油の減りは おそろしく早い。
タンクの入れ替えも 毎度ひと仕事です。
それでも暖房をつけたそばから 隙間風が熱を運び去っていきます。
家をあたためているのか 外をあたためているのか わからないほどでした。
厚手の靴下は 冬のあいだの必須アイテムです。
昔は半纏 今はダウンジャケット。
家の中で 外と同じ格好をしていました。
こたつに入ると もう出られません。
そのまま寝てしまって 風邪をひく。
毎年 誰かが必ずやりました。
我慢強さ大会があったなら わが家はきっと勝ち残れます。
でも それは自慢にはなりません。
お風呂もトイレも ひと苦労
いちばんこたえるのは 水まわりです。
トイレ 洗面 台所。
この三つの底冷えは ほんとうに半端ではありませんでした。
冬のお風呂は 入るのに勇気がいります。
服を脱ぐ脱衣所が 外のように寒い。
あたたかい湯と 冷えきった体。
その差が 体には大きな負担です。
あたたかい部屋から 寒い廊下やトイレへ。
その急な温度差が 血圧を大きく揺さぶります。
ヒートショックという言葉を 聞いたことがあると思います。
冬の入浴中に起きる事故の多くが これです。
家の中で起きる 静かな事故です。
父も もう七十をいくつも超えています。
もう何年も親戚が泊まるようなことはありませんでした。
寒さはもう がまんで済ませていい話ではありませんでした。
まず家を ぐるりと包む
断熱の考え方は とてもシンプルです。
家全体を 魔法瓶のように包む。
熱を逃がさず 冷気を入れない。
そのために 四つの場所に手を入れました。
- 床の下に 断熱材(アクリアネクスト・グラスウール)を入れる
- 壁の中に 断熱材(内断熱 ウールブレス・羊毛断熱材 外断熱 STO発泡)を入れる
- 天井の上に 断熱材(スタイロフォーム及びグラスウール)をしきつめる
- 窓を 断熱できる窓(APW330 樹脂サッシ LOE-Wペアガラス)に取りかえる
この四つがそろって はじめて家はあたたかくなります。
どれか一つが欠けても そこから熱は逃げていきます。
だから一部分ではなく 家まるごとで考えました。
解体して わかったこと
工事は 壁や床をはがすところから始まりました。
中をあけると 思ったとおりでした。
壁の中は すきまだらけです。
床下からは 冷たい風が立ちのぼってきます。
あれだけ隙間風がひどかったのも 道理でした。
100年前の家は 正直でした。
父は鉄の職人です。
牛舎も 倉庫も 鉄骨で建ててきました。
その父が はがした自分の家の中を じっと見つめていました。
「よくこれで 冬を越してきたもんだ」
そう言って 笑っていました。
断熱材は 一つずつていねいに入れていきます。
すきまを残さないことが いちばん大事です。
ここは仕上げで隠れて 二度と見えなくなる場所です。
だからこそ 手を抜けません。
いちばん効いたのは 窓
意外に思われるかもしれません。
家の熱がいちばん逃げるのは 窓です。
古い一枚ガラスの窓は 冬になると冷たい板のようでした。
その窓を 断熱性の高い窓に取りかえました。
ガラスを二重にして 樹脂枠も替えます。
これだけで 窓ぎわのあの冷たさが ほとんど消えました。
つけたそばから逃げていた熱が ちゃんと家にとどまります。
朝の光はやわらかく入り 寒さだけが消えていく。
工事のなかでも いちばん体感が変わった瞬間でした。
はじめての冬
工事が終わって 最初の冬がきました。
正月に また家族が集まりました。
去年と 同じ部屋です。
でも今年は ダウンジャケットも厚手の靴下も いりませんでした。
息も もう白くなりません。
廊下に出ても ひやっとしません。
トイレも お風呂も こわくありません。
各部屋の暖房器具は もう使っていません。
灯油の入れ替えからも 解放されました。
子どもたちが 「家じゅうがあたたかいねえ」と笑いました。
その一言で この工事の意味が ぜんぶ報われた気がしました。
おわりに
断熱は 完成しても写真には写りません。
見た目には いちばん地味な工事です。
それでも暮らしてみると いちばん「やってよかった」と感じます。
家の寒さは がまんするものではありません。
きちんと手を入れれば 直せるものです。
100年の家でも ちゃんとあたたかくなります。
次回は 地震に強くする 構造補強のお話です。
この家を これから100年 安心して使うための工事です。
どうぞお楽しみに。








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